経営している会社を息子に引き継がせたい
株式会社を経営しているAさんは、遺産相続の準備に取り掛かると同時に、息子のBさんに会社を引き継がせたいと考えています。「明日から、お前が社長だ!」の一言で片付くはずもありません…。
アドバイス
事業を引き継ぐ「事業承継」について
ここ最近「経営者は高齢化しているのに、後継者が見つからない」「相続問題が発端となり、会社が分裂してしまった」などというケースが増えています。高い技術や確かなノウハウを持っている会社が、後継者問題、相続問題が引き金となって消滅するというのは、非常に悲しいことです。そのような悲劇を招かないためには、早めに事業承継の準備を始めることが必要です。
事業継承は数週間、数か月で完了するようなものではありません。さらに、やらなければいけない手続きはたくさんあります。手遅れになってしまう前に、弁護士と共に会社の存続とさらなる繁栄に向けて、準備を進めていきましょう。
事業承継を始める前にしておくこと
親族を後継者にしようとする場合、最初にしておくことは「後継者候補の意思確認」です。経営者がいくら「息子を後継者に…」と考えていても、息子にその気がなければ、当然ながら話は一歩も先に進まなくなります。そのような場合、親族以外の従業員への承継や、会社の売却などを検討しなければなりません。
次に、会社の「ヒト・モノ・カネ」の動きと、経営者自身が所有している財産について把握しておく必要があります。「ヒト・モノ・カネ」の動きについては、分かっているつもりでも、もう一度確認をしておきましょう。株主構成を把握しておくことや、株式評価を行っておくことを忘れないようにしましょう。
また、経営者自身の財産を把握することは、自社の株式や事業用の資産等を、どのようにして後継者に取得させるかという大きな課題を解決する糸口となります。まずは、ここに挙げたことを足がかりに、事業承継への準備を始めましょう。

相続税がかかる財産・かからない財産
事業承継は一般的に、少なくとも数年先を見据えて準備を進めていくことが必要です。そのための道標となるのが「事業承継計画」です。それでは、事業承継計画を作成するための「3つの項目」についてお話ししましょう。
先ほどお話しした「ヒト・モノ・カネ」の動きを知ることが、事業承継計画を作成する最初のポイントになります。会社のあらゆる数値・情報・ノウハウなどを明確化し、「何となく分かっていた…」という程度の会社の状況を客観的に見つめ直して、課題の発見や今後の経営方針や経営目標の設定を行います。

息子に事業を引き継がせると言っても、決意した翌日に経営者が交代するといったことは、余程の非常事態でもない限り、まずあり得ないことです。取引先や従業員への周知も必要ですし、何より、後継者の教育や資産の譲渡などの重要な手続きを行わなければなりません。今後の経営方針や経営目標に沿って、どのタイミングで、何をする必要があるのかを検討し、周到に引き継ぎ計画を立てていきましょう。

引き継ぎ計画のイメージを固めたら、事業承継計画書を作成しましょう。計画書の作成は経営者が一人で行うのではなく、後継者と一緒に行いましょう。計画書の作成を後継者と一緒に行うことで、経営者と後継者が、問題意識を共有できるようになるはずです。計画書には、いつ、どのタイミングで、何をするのかということと同時に、売上高や利益といった具体的な目標数値を挙げておくことも必要です。事業承継計画書の具体例は、中小企業庁のホームーページに掲載されていますので、参考にしてみると良いでしょう。
◆中小企業庁 事業継承ガイドライン20問20答
「Q3 事業承継計画って、どのようなものですか?」
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/q03.htm

株式や財産の分配、生前贈与について
経営者に万が一の事態が発生したとき、残された親族に財産が相続されることになります。そのような場合に、自社株式をはじめとする事業用資産を、複数の相続人に分配しなければならなくなったとしたら…せっかくの事業用資産が分散されることになり、後継者が会社を運営していく際に、少なからず影響を与えることになります。そのような事態を防ぐには、事業用資産を後継者に集中させることが必要です。その具体的な方法としては、下記のようなものが挙げられます。
生前贈与とは、文字通り、生きている間に財産を分け与えることです。経営者の存命中に相続を行うことができるため、後継者に対して確実に資産を集中させることが可能になります。生前贈与の制度を活用して資産を後継者に集中させる場合も「贈与税」が発生します。その課税制度は「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2つから選択することができます。これは、家族や財産の構成によって有利・不利がありますので、どちらが良いかを見極める必要があります。

「暦年課税制度」
暦年(1月1日~12月31日までの1年間)毎に、その年中に贈与された価額の合計に対して、贈与税が課税される制度のこと。
「相続時精算課税制度」
親(経営者)から子(後継者)への贈与について、贈与の際に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で清算する制度のこと。
それぞれについて、贈与者・受贈者の制限や控除額、税率、手続き方法などが異なります。また、遺留分についての注意も必要になりますので、詳しくお知りになりたい方は、弁護士にご相談ください。
経営者が遺言書を作成し、事業用資産を後継者である息子に集中させる旨を記載しておくことで、遺産分割協議によって相続人間で資産が分散することを防ぐことができます。ただし、こちらの場合も遺留分についての注意が必要になりますので、詳しくお知りになりたい方は、弁護士にご相談ください。

平成18年に施行された「会社法」の制度を活用することで、資産を後継者に集中させることが可能になります。
・分散してしまった株式の買い取り
株式の買い取りは、経営者または後継者個人だけでなく、会社による取得も可能になります。
・株式譲渡制限条項の設置
株式譲渡制限条項を設置することで、会社から見て好ましくない人物に対して、自社株の譲渡・売却を制限することができます。
・相続人への売渡請求条項の設置
相続人への売渡譲請求条項を設置することで、会社から見て好ましくない相続人が株式を相続した場合、その相続人に対して、自社株の売渡請求をすることができます。
・議決権制限株式を発行する
株主総会での特定の議決権が制限された株式を発行し、それを後継者以外の相続人に相続させることで、後継者に議決権を集中させることができます。
・拒否権付種類株式(黄金株)を発行する
株主総会による特定の決定事項への拒否権が認められる株式が「拒否権付種類株式(黄金株)」です。
経営者が黄金株を一定の期間保持しておけば、後継者の経営に対して力を維持することができます。
そのほかにも、いくつかの方法がありますので、確実に事業用資産を後継者に集中させたい場合は、弁護士にご相談ください。会社にとってのベストな方法をご提案します。










